ささやかな逃走

サウンドブランディングについて考えるブログ

あのCM曲はどうやって生まれたのか!?②

音楽クリエイターズ「僕が広告音楽を年間200本やるまでに考えてきた事」レポート、第2回です。

第1回はこちら。

kareigohan42.hatenablog.com

 

前回に引き続き、まずはSONYの事例について。

■「左脳的に逆算して構成」(SONY BRAVIAの事例)

 

 

CMの仕事では、左脳的に逆算して作っていくことが多くて、今回もその例です。

構成音としては、基本的にアコースティックな楽器とシンセの音だけで構成しています。

考え方としては、

・色彩についてのCMだからカラフルで音色がいっぱいあった方がいいだろうな

・映像に木や森がたくさん出てくるので、木っぽい感じをアコースティックな楽器で出そう

・電子音はシンセだけに任せよう

・先進性を保つために、ピコピコしたシンセよりは上質な雰囲気のあるシンセにしよう

・「今っぽさ」を作るためにピチカートは人間では弾けない16分音符をあえて出そう

・最後の展開時のギターは4本くらいで、色んな響きが混ざったらいいだろうな

・ローコードとハイコードと色んなポジションでギターを弾いて広がりを出そう 

・かっこ良さを演出するため、普通のコードよりはナインスとかテンションが入ったコードの方がいいかな

このように一つ一つの要素を逆算的に考えていって、最終的な構成を作っています。

 

考え始めてからレコーディングまでの期間は、最初は3-4時間で一旦作っています。

OKが出てからシンセを作っていきます。

CMで多いのは、画合わせで音楽を作っているのに、最後の最後で映像がかわってしまい一からやり直すというパターンです。気持ちは分かるんですけど、結構つらかったですね。笑

 

今回のように、先進性が欲しいけどあまりエレクトロエレクトロしない音楽が欲しい、
というのは比較的多いオーダーで、
資生堂なども似たオーダーが来ていました。
生楽器でできないことをシンセで再現してやるなどの形で先進性を表現する、というのは多かったように思います。

 

良くも悪くも厄介な「サンプル音楽」(ほっともっとの事例)

 

 

ほっともっとは、280円!とか安さを訴求するのではなくて
食から人は形成されてるよ、という上質な感じを出してイメージを一新したいというオーダーでした。
これも少し似ていて、上質さとアコースティック感を出すように構成しています。

まず初めに、絵コンテをもらってから始まります。

そこでプロデューサーが20曲くらい出てきた中から音楽のサンプルを選びます。

【サンプル曲が流れる】

アコースティックで可愛いらしい感じと、ぐぉーと出てくるところが映像の広さを表現している、ということでこの曲が軸になると決まりました。

 

この「サンプル」というのが、良くも悪くも厄介なものです。

もちろん、サンプルのおかげでだいたいの方向性は決まるわけですが、
監督が作曲家が作った曲を聞く中で、

「サンプルにもっと寄せてくれて」という注文がつくのはよくあることです。

作曲家としては、全く極力パクりたくないと思いながらも、「もっと似せてくれ」
と言われてかなり近しいものを作ることになったりします。

ただ、そこはプロデューサーと戦うべきところでもあって、
これ以上似せるのであれば、いくら払ってサンプルそのまま使ってくださいと言えることも作曲家として重要です。

僕はそういう話ができるプロデューサーと一緒にやっていたので良い環境だったとは思っています。

職業柄、CMを見ていても「ああ、あの曲がサンプルになってるな」と思うこともあって、結構その辺りは危うい場合もあったりするわけです。

 

そんな背景がある中で、「サンプルそのままでもいいくらい」
と言われて作ったのがこの曲です。

【音楽①が流れる】

 CM音楽を作る際は、このタイミングで2曲以上作っておいて、

その中から選んでもらう仕組みになっています。

この2曲にどう違いを出すかというのも悩むところです。

 

今回の曲は、サンプルがマリンバで刻んでいるので、
そこが同じだと完全に一致してしまうので、ストリングスとピアノで刻んでいます。

メロディが入ってくると一致してくることはあまり無いので、単純なメロディにしつつ
広さを出すために「」という楽器を使って「ぐぉーっ」という音をつけたり、
エレクトロニカでぷちぷちした音を作ったりしています。

 

この時はBタイプを気に入ってもらって、これをブラッシュアップすることになりました。

 

そして、この後で制作された映像が送られてきます。

【音付の映像が流れる】

作った音もついていて、だいたいこういう感じでいきたいです、というのが見えてきます。

ほっともっとの場合は、
「画がシンプルだから音楽はもうちょっとドラマティックにしたい」
「ぐぉーっをでかくしてほしい」
というような依頼があって、進めていきました。

 

ぱっと聞いただけでは分からないくらいの変更点なのですが、
シンセの音を増やしたり、
ループを増やしたり、
微細なところで監督とやり取りしながら映像と合うように整えていきます。

 

…と、中途半端ですが次回をお楽しみに。

次回は「CM音楽で人を説得する戦略とは!?」