ささやかな逃走

サウンドブランディングについて考えるブログ

CM音楽は「小ネタ」がカギ!?

 

今回で第3回目になります。

僕が広告音楽を年間200本やるまでに考えてきた事」レポートです。

前回、前々回の記事はこちら。

kareigohan42.hatenablog.com

kareigohan42.hatenablog.com

 

 

 引き続き、近谷氏の講演内容をレポートします。

前回途中になってしまいましたので、ほっともっとのCM音楽制作について、続きをお届けします。

 

 

CM音楽に潜む「小ネタ」の意義とは

CMで面白いのは左脳的に作ることが多い点ですね。
左脳的に作っていくことが、人に説明しやすい・話しやすい要因にもなります。

例えば、ほっともっとの場合だと、

最初に出てくる歩いてる音、「カッカッカッ」という音は、
実は包丁で野菜を切っている音をフィルターにかけて作っています。


これって、別にわざわざ作らなくてもいい音ではあるんですが、

説明する時に説得力があるんですよね。「おーっ!」って言ってもらえる。

僕たち作曲家はクライアントに直接プレゼンするわけではなくて
広告代理店の方や監督にプレゼンするんですが、

「何でこの音楽がいいのか」っていうのを説明しやすい要素を彼らに渡してあげると、

彼らがクライアントの社長とかにプレゼンする時にやりやすいと思うんですよね。

 

代理店「実はこの音は包丁で…!」

クライアント「おぉ、なるほどね…!!深い!」

ってなるわけです。

 

ただ、僕はそういう潜在的な細かいディテールが、
見ている人にも届くのではないかと思っています。

 

ほっともっとだけではもちろんなくて、

桃の天然水」の仕事でも雨の音をサンプリングして
左右でずっと流して水っぽい感じを出してみるとか。

「SEIKO」でも「カッカッカッ」って秒針を感じられる音をシンセに入れてみたり。 

 

「小ネタ」みたいな感じですけど、これが意外と効くものだと信じています。
誰が聞いてるか分からないけど、
CMってじーっと聴くようなものではなくて、
ふと耳にするようなものだから、
そのふとした瞬間に「ぽいな」と思ってもらえるように、と考えて作っています。

 

広告音楽で大事なのは「分かりやすさ」

 ――(会場からの質問)始められた当初から「小ネタ」を大事にするなどの考え方でやっていたんですか。

もちろん広告音楽をやっていく中で身に着けていったものです。
初めはサンプリングの仕方も分からないくらいだったのですが、
クライアントとの会議に一緒に行って、伝えたいメッセージが何なのか、
などを聞いていると

広告って分かりやすくないとだめなんだ、というかむしろ分かりやすい方が良い!

ってことに気が付いてきたんですね。
僕としては、コンセプト音楽のように音楽を作っていくのが純粋に面白いと思うし、
コンセプトが決まっていて作った方が選択肢も少ない中で作り込めると思ってやってきました。

逆に自由すぎると難しいと感じます。

 

バリエーション豊かな「音楽ディレクション」の経験 

――(会場からの質問)実際のレコーディングはどのように行っているのですか。

 

予算や機械によりますが、

本番のときにバンドひとつずつ弾いてもらってやることが多いです。
予算があれば楽器を使ってやっていきます。
CMを始めてから本当にバリエーション豊かなレコーディングをやらせてもらえていて、
尺八・サックスから演歌歌手まで、
ディレクションの経験を積むことができました。

音のニュアンスとかテンポ感を、「どう伝えたらどう出てくる」っていうのは
数こなさないとわからない部分が大きいんですよね。

息多めで、とかセクシーな感じで、とか一つ一つのやりとりがすごく勉強になったと感じています。

 

楽器はひとつずつレコーディングするので、同時には録らないことが多いです。
後になってこの楽器だけボリューム上げて、というオーダーが来ることも多いので。
ただ、ビッグバンドとかの時は一発でみんなで録っちゃった方が空気が良いので、
それもケースバイケースではありますね。

 

 CM音楽に潜む「小ネタ」、聴きながら探してみるのも面白いかもしれません。
クライアントと直接向き合う立場でなくとも、
作曲した音楽の「その先」を見つめながら
説明しやすい曲を左脳的に作っていく、という姿勢は職業作家ならではの重要な視点だと感じました。

随分長くなってきてしまったので、そろそろ次でラストにしたいと思います!

 

f:id:kareigohan42:20151108151156p:plain