ささやかな逃走

サウンドブランディングについて考えるブログ

「僕が広告音楽を年間200本やるまでに考えてきた事」レポート①

音楽クリエイターズ #05「僕が広告音楽を年間200本やるまでに考えてきた事」に参加してきました。

アーティストや作曲家のコミュニティを運営するクレオフーガ主催のイベントです。

ゲスト講師はサントリー、セコム、ほっともっとなどなど数々のテレビCMの音楽を手がけられてきた作曲家の近谷 直之氏。

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サウンドブランディングという本ブログの目指すテーマの一部でもある「広告音楽」について知見を深めるのだ!と会社を定時で飛び出し参加してまいりました。

 

何回かに分けて、レポートをアップします。

 

途中からの参加になってしまいましたので、中途半端なところから始まってしまいますが悪しからず。

 

■広告音楽の制作・発注フロー

発注の流れは、

クライアント⇒広告代理店⇒映像の監督⇒音楽プロデューサー⇒作曲家

となっています。

広告を発注するクライアントが広告代理店に仕事をお願いするのが第一段階。
CMを制作する、となった時点でまずは映像の監督が決まります。
そしてこの映像の監督が「こんな音楽を作りたいな」という依頼を音楽プロデューサーにしていき、音楽プロデューサーはそれに対していくつかのサンプルを提示します。
そこで実際にどのサンプルで行くか、が決定したところで音楽プロデューサーが作曲家に対し、「こんな音楽を作ってくれ」となる。
これが一般的な音楽制作のフローとなっています。

作曲家がクライアント直接会うようなことはほとんど無く、基本的には音楽プロデューサーとのやりとりになります。

見てもらえれば分かるとは思いますが、良くも悪くも縦割の構造です。
どうしても、作曲家には予算面でもスケジュール面でも多くのしわよせが来てしまうのが現状です。

結果、3日から4日で2曲くらい作ってくれ、というプロジェクトが20くらい並行している状態が続いていく、というイメージです。

 

■広告としての「ポジティブな表現」を追求する面白さ

CM音楽は個人的には楽しい仕事でした。

ただ、タイトルにあるように年に200本の広告音楽制作に携わっている時は音楽を作っている感覚は無かった。

常に10本~15本を同時並行で作曲していきます。クラシック音楽をやりながら、Perfumeぽい曲を作れと言われながら、とにかく時間内にこなしていきました。
その頃には、会社に行く電車か帰る電車か分からなくなるくらいの感覚になっていましたね。
ただ、この本数も、フリーでなく会社の中だからこそ可能な数ではあったと思います。

CM音楽の制作が面白かったのは、広告ってとにかく「情報の嵐」だということに初めて気が付いたところにあります。

音楽に限らず、キャッチコピーとかフォントとか壁紙とか、今までトイレに行く時間だとしか思っていなかったCMが本当に面白く思えた。

かつ、仕事の中で広告会社の最先端のクリエイター等と協力してCMを作り上げていくのは非常に刺激的なことでした。

広告の特別なところは、根本的にはその商品や企業の「熱い思い」とか「ポジティブな思い」からできていることだと思います。その商品が誰かを幸せにするとか、社会の誰かのために働いているということだとか。

CM音楽を制作する中で、自分が音楽制作という形で関わっていることで誰かが幸せになったりするんだろうなぁ、と思いながらやっていました。その感覚は楽しかったし幸せな仕事だったと思いますね。

 

■先進性と安心感をテーマに、クラシック曲をアレンジ(セコムの事例)

1年ほど放送されていたCMなので、結構見てくれた人もいらっしゃるようですね。

このCMは、先進性と安心感を与えたいというオファーを元に制作しました。

「先進性と安心感」というキーワードから、
オリジナル曲を制作するよりも、耳慣れたクラシック曲を使って安心感を持たせながら、先進性を感じられるようにアレンジするのがよいのでは、と思って進めました。

使っているのは、有名な「くるみ割り人形」のメロディです。
原曲のリズムのキャッチ―さを活かしたアレンジをしていきました。
リズムを強調するために、指のスナップを録音してキーボードに入れ、それを打ち込むなどしました。

また、映像とのシンクロという点で特に指定はありませんでしたが、
最後の高い所から街と太陽を撮影したシーンがすごく開けて綺麗だったので、
そこに全ての音の展開を合わせることを意識して制作しました。

 

■「CIで全てが集約するよう、考え抜いて制作した」(SONYの事例)

SONY新しいテレビ、4K対応のBRAVIAが出た時のCMです。
これは映像を見てサウンドデザイン的に良くやってくれ、と比較的ざっくりした依頼で制作しました。

映像を見せてもらったところ、非常に色合いがきれいだったことと、
色の名前が出てくるのが特徴だったので、
この色の名前が出るタイミングに音を合わせたら気持ち良いんだろうな、と思い
モーションに合わせる形で制作しました。

これも前のセコムと似ていて、最後のシーンが盛り上がるので、
サウンド的にもこのタイミングをピークとして、全ての音要素でだーんとまとめたら
気持ちが良いだろうと思いました。

これはかなり頭を使って作ったサウンドではあって、
最後につくSONYのCI(サウンドロゴ)である「ソ」の音で全てが集約するように意識をしました。
そのために全体のコードをGメジャーで作ってあります。
CMのBGMと、SONYのCIが切れてしまわないように、融合するように作ってあります。

【2に続く】